480 名前:夜の訪問者 :05/03/12 01:02:33 ID:A3Svl0iS

ガンガンガン。
見るともなしにテレビを見ていた俺の耳に、アパートの俺の部屋のドアを
激しく連打する音が聞こえた。
 ピンポンピンポンピンポン。
チャイムまで連打している。こんなにしつこくてやかましいのは、たちの悪い
勧誘か何かでなければあいつしかいない。俺がドアを開けてやると、はたして
あいつはにへっと笑って玄関先に突っ立っていた。
「あのなあ……。近所迷惑だろうが。借金取りかよ」
 俺が苦言を呈しても、智は知らん顔でさっさと部屋に入ってきた。
「相変わらず小汚い部屋だねー」
「聞けよ人の話。だいたい電話でアポぐらいはとったらどうなんだ?」
「んー? だって私とダーリンの仲なんだからそんなのいちいちいらないじゃん」
 確かに、こいつとは高校在学中にひょんなことから俺の告白が成って
こうしてつき合っている仲ではある。だけど、こっちにだって事情くらいはある。
「あのな、ちゃんと来るって言ってくれればもうちょっと部屋だって片付けたよ」
「エロ本とか?」
「…………」
ああ、もうこいつはこういう奴だ。分かっていながらこいつにしとやかさとか
しおらしさとかを求めている俺はバカなんだろうか?
「それともなに?」
 いきなり、智が体をぎゅっと押し付けてきた。今まで何度も抱き合って
きたことがあるくせに、やっぱりこうされると俺はちょっとどきっとしてしまう。
そして、智からちゃんと女の子の匂いがすることに、ちょっと安心する。
「他の女でもつれ込んでるのか?」
「ば、ばかっ。んなわけねーだろ」
思わず動揺した俺を、智は高校時代から変わらない、あの見た人を微妙に
不快にさせる笑顔で笑った。
「あははー。びくびくしてやんのー」
「ったく……」
急に智は笑うのをやめた。
「……ほんとに他の女とかいないよね!?」
「不安になるんだったらそういうこと言うんじゃねえ!」

 

481 名前:夜の訪問者 :05/03/12 01:03:19 ID:A3Svl0iS

ああ、相変わらずのツッコミ係。在りし日の水原の苦労が偲ばれるな。
死んでないけど。
「ところでそんなことより、今日私が来たのは他でもない。晩ごはんを
作ってあげにきたのだー!」
 相変わらず展開の急な女だ。買い物袋をぶら下げているという珍しい格好
だったから、予想はしてたんだけど。本当にたまにだが、智は手料理を
振る舞ってくれる。
「作ってくれるのは嬉しいんだけどさ、何作ってくれるんだ。」
「ハンバーグと、コロッケ」
……どうしてこいつの作る食事は、主菜ばっかりなんだ?
 俺は、黙って台所の冷蔵庫を開けると、適当に野菜を見繕った。
俺も自炊に馴れてきて、そこそこのものは作れる。簡単なサラダでも作ろう。
あとは米があればいい。
「あれれー? な、なにを始めるの?」
「いいから、お前はハンバーグとコロッケを作ってなさい」
 米を研ぎながら、俺はため息をついた。

 智の作ったハンバーグとコロッケは、満足すべき味だった。食後のひととき、
二人でぼけーっとテレビを見ながら、茶をすする。
「なあ……。今日、泊まっていくつもりなのか?」
「そーだよ」
 若い女が若い男の部屋で、食事を作り、そして泊まったら、することは一つだ。
智が料理をするときは俺がどんなに手伝いをしようとも片付けは一方的に俺の
担当なので、洗い物をしている時に後ろから……というおいしいところはないが。
「本当か?」
「うん」
 けど、智の場合は油断できない。
「あのー、こんなこと聞くのは何だけど……今日生理じゃないよな?」
「ちげーよ! あー、もー。ダーリンはデリカシーってもんがないね」
智にも、以前俺が智が寝入ったあとこっそりトイレでたぎりを鎮めないと
いけなかったことが、どんなに悲しかったかを感じるデリカシーぐらいは
持ってほしい。

 

482 名前:夜の訪問者 :05/03/12 01:05:00 ID:A3Svl0iS

「はいはい、悪かったよ」
「むー」
 テレビを消した。お互いの息をする音と、茶をすする音しか聞こえない。
「…………」
「…………」
「あの、今日はいいんだよな」
「……どうしよう」
「いいんだよな」
 智をこちらに向かせて、そっと肩をつかんだ。少々強引にいかないと、
はぐらかされるのは何度も経験している。
「智の作った飯、うまかったぞ」
「…………」
「な、せっかく来たんだから……」
「……ま、そこまで言うならしかたないなー」
ちょっと顔を赤らめながら、智が俺の胸に飛び込んできた。飯をほめたのが
良かったらしい。智を、ぎゅっと抱きしめてやる。本当にかわいい。
が、いきなり智が腕を突っ張って俺を突き放した。
「なっ、おい、どうした……」
「あんた臭い」
 相変わらず忌憚のない奴だ。
「生きてるんだから汗ぐらいかくよ。ってか、もっとオブラートに包んだ
言い方ってものを……」
「臭いもんは臭い! 風呂入れー!」
 こうして、しばしのお預けを食らった。

 

483 名前:夜の訪問者 :05/03/12 01:06:20 ID:A3Svl0iS

「ふへへー。お待たせー」
 バスタオル姿で、ポーズをとりながら、満面の笑顔で智が風呂から上がってきた。
相変わらずどこまでが冗談でどこまでが本気か分かりづらい。
「んー? この私のセクシースタイルにみとれちゃったかにゃー」
出るところがあまり出てないので、棒に布を巻き付けたようだ、なんて言ったら
怒って帰ってしまうのが目に見えているのでそれは言わなかった。そのかわり、
ポーズをとっている智に黙って抱きついた。
「わっ、こ、こら! 気が早い!」
「あのな、壁はそんなに厚くない。大声出し過ぎんなよ」
 抱きつきながらベッドまで押してやる。倒れ込みながら電気の紐を引いた。
まだ目が慣れていない分、肌の感覚とか、吐息とかがしっかり感じられるような
気がする。バスタオル越しに、がちがちになった俺の棒が智の太ももに触れた。
「……わっ。このスケベー。んっ……」
キスでうるさい口を黙らせながら、そっと智の胸に手をはわせた。
まだバスタオルの上からだ。
「……んはっ。ちょっ、やだ、ざらざらするよ」
バスタオルの荒い生地が、意外に効果を与えているようだ。今後も使えるかも。
俺は、智の唇がもう一度欲しくなった。智も同じことを考えていたようで、
ちょっと触れると向こうの方から押し付けてくる。べちゃ、べちゃと唾液が
混ざる度に、がちがちになっていたはずの俺の棒はまだ硬さを増していく。
「……っ!」
 不意に、棒にざらっとした感覚が走り、背筋まで駆け抜けていった。
智が、バスタオル越しに俺の棒をつかんでいるのだ。そして、もみもみしながら
手を上下に動かしはじめた。おあずけを食らっていた俺には、強烈だった。
下腹部全体がこわばっていくような感覚。今すぐにでも熱いものが昇って
きそうだ。
「へへ……。バスタオルに出させちゃうもんね」
確かにこれはこれですごくいいんだが、これで出してしまったらここまで
我慢したのがもったいなさすぎる。手遅れになる前に、智の手を引きはがした。

 

484 名前:夜の訪問者 :05/03/12 01:07:28 ID:A3Svl0iS

「あー、せっかくしてるのに……っあ。やだ、もう直接……んっ」
 お返しとばかり、バスタオルの中に手を忍ばせ、こねるように揉んでやる。
別に胸だけで好き嫌いを決めたわけじゃないが、智の大きさは俺は個人的に
非常に気に入っている。だから、たっぷりかわいがってやる。
バスタオルはもういらない。はだけさせて、乳首に吸い付いた。
智の肌はすべすべしていて、触っても舐めても心地いい。
「あ、あ……。ん、す、吸うなぁっ」
 そう言いながら、体をぴくぴくさせて、そして俺の頭を腕で抱いて
ぎゅっと自分の胸に押し付けている。いい感じだ。これなら、逆襲は
とりあえずないはずだ。一気に押し切ろうと、人さし指を智の股の間に
潜り込ませる。わずかな湿り気をクリトリスに塗り付けるようにすると、
じわじわと湿り気が広がっていく。柔らかい肉の熱さが増していく。
「んっ! んぁ、あ……、ダーリン、そんな……。んん……」
 智の嬌声が興奮を余計に駆り立て、俺の棒も直接刺激されていないのに
限界が近い。なるべく快感を続かせてやるように、右手で智をいじりながら
ゴムを引き出しから取り出した。
「あ、はぁ、もう? ふ、あぁ……」
「はっ、早いか?」
 暗がりの中、俺の問いに智が大きく首を首を振るのが見えた。準備を終え、
つばを飲み込み、智の入り口に棒を添える。
「ごめんな、早い男でさ……」
「ん……んなこと言うな! いやになるでしょ! いいって言ったらいいの……
くぁっ!」
 しゃべっている途中で、辛抱たまらなくなった俺が突き入れたせいで、
智は大きく息をついた。もう今となっては痛くはないが、突き入れられるときは
独特の衝撃があるらしい。
「はふ……む……」
「ん……好き……ふぁ」
 どちらからともなく唇も求め、そしてぬるりと俺が棒を動かした。
「……ぁ。はっ、あ……、ああ……」
ほとんど声になっていない嬌声をあげながら、智は俺の頭の後ろに手を回した。

 

485 名前:夜の訪問者 :05/03/12 01:08:01 ID:A3Svl0iS

「ダーリン……。ダーリ……あっ、ああ……」
「とも、ともぉ……」
焦りを必死に押さえて、智の感触を噛み締めるようにゆっくり、ゆっくり
突いていく。こねるようにすると、智のぬくもりが伝わって、この気持ちよさに
今すぐ飲まれたいと思える。
「っあ、ああっ……。ダ……リン、あふっ……ク……」
「ともっ……」
 焦点の合わない智の目が、きゅっと閉じられると同時に、ぎゅぎゅっと
ねじ込むように突き入れた。
「……ぁ、……は、はぁ、あ……ああ……」
 智ががくがくと震え、脱力したことに満足し、俺も欲望を吹き出した。
我慢の固まりが飛び出す度に、言いしれない快感が走る。
「ともっ、ともぉっ……!」
「あ……っ。あ……」
とどめの一突きで、もう一度軽く昇ったのか、智はぴくりとふるえ、とろんとした
目で俺を見つめた。


 

486 名前:夜の訪問者 :05/03/12 01:09:07 ID:A3Svl0iS

「もうほんとに寝るぞー」
「ういー」
 智がベッドにおさまったのを確認して、電気の紐を引いた。お互いくたくたで、
眠くてしょうがない。俺もベッドに潜り込む。
「そういえばさ」
「ん?」
「智って実家暮しなのにさ、よくいっつもこうやって泊まりに来れるな。
親御さんとかだいじょうぶなのか? 心配とかしてるだろ?」
「あー、それはね」
智がごぞっと動いた。
「よみのとこ泊まるっていってるから」
「ああ、そうか」
 水原なら安心だ。けれど、嫌な予感がする。智には油断ならない。
「あのさ、それってちゃんと水原と打ち合わせとかしてるんだよな?」
「へ? してねーよ? なんで?」
俺はため息をついた。やっぱり油断ならない。
「あのさ、水原に一言連絡ぐらいしとけよ。親御さんが水原の家に電話して
水原が『智は来てない』って答えたらどうするんだよ」
「あ、そっかー」
「まったく……」
ここはびしっと言っておかなきゃいけない。
「智、おまえさ、そういうとこもっとしっかりしてくれ……」
「すー」
「もう寝てるし。しょうがないやつだな……」
 俺はもう一度ため息をつくと、寝入った智のほほをそっとなでた。

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