198 名前:誘惑の眠り姫[sage] :2005/10/23(日) 19:27:20 ID:9dzsIlRL

その日は蒸し暑い日曜の午後だった。太陽の光が上から容赦なく降り注ぎ、下からはその熱をアスファルトがじりじりと照り返していている。
そのためか休日だというのに窓の景色から人の姿を見ることはほとんどなかった。 
そんな中珍しく部活が休みだった神楽が私の部屋に遊びに来た。
神楽はTシャツをぱたぱたと扇いで部屋に入るなり私のベッドに倒れ込んだ。
部屋は冷房が効かせてあったので、神楽は嬉しそうな表情で小さく唸りながら冷たくなったシーツにしがみついている。
私は神楽のために何か冷たいものを持って来ようと部屋を出た。
神楽を待たせて台所で麦茶とお菓子を用意して戻ってくると、神楽は私のベッドの上でぐったりと四肢を投げ出して目を閉じていた。
「神楽?」
声をかけても全く返事がない。上からそうっと覗き込んでみると思った通り、神楽は眠ってしまっていた。
どうやら日頃の部活で疲れが溜まっていたらしい。二人きりで過ごすのは久しぶりだし、それなりに期待していたこともあったので
かなり残念だ。だけどこんなにもぐっすりと眠り込んでしまった神楽を起こしてしまうのも申し訳ない気持ちがして、お盆を抱えたまま
どうしたものかとつっ立った。
「この自家製の麦茶、すごく美味しいんだけどな…」
ちょっと大きめの独り言を言ってみる。実はこの声で神楽が目を覚まさないかなと悪あがきしてみたのだけれど、相変わらず神楽から
は何の反応もない。
これは起きそうもないな、と苦笑してお盆をテーブルに置いた。
諦めて神楽の寝ているベッドを背に、読みかけの本に手を伸ばす。
しばらく部屋には、冷房が風を出す音と時折捲られるページの音が響くだけの静かな時間が流れた。


 

199 名前:誘惑の眠り姫[sage] :2005/10/23(日) 19:29:10 ID:9dzsIlRL

「んふふ…」
「ん?」
後ろから小さな笑い声が聞こえてきた。起きたのかと思って振り返ったが、神楽はさっきと同じ姿勢ですやすやと眠り込んでいる。
ただ違うのは神楽の表情だ。口元を少し緩ませて微笑んでいる。
いい夢でも見ているのか?
何だかあまりにも気持ち良さそうに寝ているのがちょっと可笑しくて、本を読むのをいったん止めて、神楽の寝顔をゆっくりと眺めることにした。
「それにしても…」
可愛い。
こんなに神楽の顔をまじまじと見るのは意外とこれが初めてかもしれない。普段からそう思うことは割とあるのだが、神楽は目鼻のはっきり
とした、整った顔立ちをしている。
その顔が凛として綺麗に映るときもあれば、今こうやって幼い子供のように安らかな顔をして可愛らしく見えるときもある。これも神楽の魅力の
ひとつだ。
毎日プールに入っているためなのか、ちょっぴり茶色になっている髪の毛が冷房の風でそよそよと揺れて、それが思わず触れてしまいたくな
るほど柔らかそうだ。
ほっぺを人差し指でつついてみると、ぷにぷにとした弾力が返ってくる。面白くなって何度もつついてみると神楽がくすぐったそうに身をよじった。
か、可愛い。
思わずにやけてしまいそうになる。まるで小動物のような愛くるしい仕草が私の胸をときめかせた。
これは保存版だ。是非カメラに残しておかないと。
何やら使命感に駆られてカメラを探そうと立ち上がる。それと同時に冷房のタイマーが切れたことを示す短い機械音が鳴った。


 

200 名前:誘惑の眠り姫[sage] :2005/10/23(日) 19:32:03 ID:9dzsIlRL

「あった…」
見つけたカメラの残量を確認してみる。…5枚。いける。
可愛い生き物が大好きな私は、特に大好きな猫を、触れないならせめてカメラで撮って楽しもうと前に何度か挑戦したことがあったが結果は逃げられる、噛まれる…あげくに無理やり撮ったものも写真にしてみるとぶれてしまって何が写ってるのか分からないと散々なものだった。
だけど今回は違う。相手は人間で、しかも寝ているのだ。
確実に撮れる。(ガッツポーズ)
神楽の前に立って嬉々としてカメラを構える。どのようなアングルで撮ろうか迷っている内に、今まで身動き一つしていなかった神楽の様子が変わった。Tシャツを引っ張ったり、太ももを擦り合わせたり、何やらもじもじと動いている。
「?」
そんな妖しい動きにつられて、フィルターを下半身に向けてついつい撮影しそうになった。
いきなり何だろう。私から変な気配が出ていたのか?…まさかアレをするつもりじゃないだろうな。なんて妄想を巡らせて、一瞬本気で焦ったがすぐに原因に気がついた。

冷房が止まったこの部屋は、窓も閉め切っているためか湿度が急激に上がって蒸し暑くなっているのだ。
神楽は寝苦しくなったのだろう。汗が張りついて気持ち悪いのか、Tシャツを上に上にぐいぐいと引っ張っている。
神楽のTシャツが胸のすぐ下まで捲り上げられたところで、動きが止まった。神楽のお腹が露わになる。
思わず視線はそこに釘付けになった。
顔や腕はすっかり小麦色に焼けているのに、衣服に隠れていたお腹は白いままで妙に眩しく目に映る。
視線を移すと神楽の頬は赤くなっており、額はうっすらと汗ばんでいる。さらに冷房の音がしなくなったためか、神楽のすうすうと吐く可愛い寝息がはっきりと耳に届く。何だか胸がドキドキしてきて落ち着かない気分になってきた。
「…さすがに、これは撮ったらまずいかな」
私はとりあえずカメラをテーブルに置いて、考えた。
もう一度冷房を入れてあげよう。いや、お腹を出したままでは風を引いてしまう。
なら私が服を元に戻してあげればすむか。…待て。窓を開けて風通りを良くした方が体にいいな。
なら、早くそうすればいいじゃないか。
…何を迷っている?
そこまで考えて、私はこめかみに手をおいてため息をついた。
分かってる。惜しいんだ。こんなあられもない神楽をゆっくりと見れることなんてそうないことだ。
いつもなら恥ずかしがって隠そうとするから、なかなかこんな機会はない。
そうだ、本心を認めよう。

私は神楽を見ていたい。というか…その、猛烈に手を出したくなっている。


 

201 名前:誘惑の眠り姫[sage] :2005/10/23(日) 19:33:34 ID:9dzsIlRL

でもいくら神楽が私の恋人だからって、相手の寝込みにそんな事をするのはよくない。うん。よくない。
それなら神楽を起こしてから正々堂々と触る方が人としての常識的な配慮のはずだ。…多分。
だけど疲れて眠っている神楽を自分の欲望のために起こすなんて、それも何か間違っている気がする。
ここはやはり、この欲望を抑え込むことこそが神楽のためを想う行動として正解なんじゃないかな。
じゃあどうやって時間を潰すのか。
さっきの本でも読み直すか?…駄目だ。あんな神楽を見た後ではどうせ集中なんかできない。
いっそ、この部屋を出て散歩でもするか?…それも駄目だ。私が出ている間に神楽が起きたら困るだろう。
第一せっかく二人きりで部屋にいるのに勿体無いぞ。
まとまらない答えに思わず唇を噛みしめた。

何故だ?何故私は自分の部屋にいるだけでこんなに追い込まれているんだ?


 

202 名前:誘惑の眠り姫[sage] :2005/10/23(日) 19:35:20 ID:9dzsIlRL

「それにしても、よく寝ているな」
(一人で勝手に)軽くパニックに陥っている私とは対照的に、神楽は気持ち良さそうに眠ったままだ。
仰向けでも形を崩さない大きな胸が規則正しく上下させながら、よく引き締まった白いお腹を表に出しながら、私の前で眠っている。
今の神楽はあまりにも無防備だ。これでは私に食べてくれと言ってるようなものだ。
こんな姿を見せておいて君は我慢しろというのか。もうホントに襲ってしまうぞ。
自分勝手だと思いつつも、心の中で神楽に叫んでみる。
神楽がぴくりと動いた。
「…だめ…榊……」
「…!?」
神楽の寝言に私は開いた口が塞がらなかった。どうやら神楽の夢に私の不純な気持ちが伝わったらしい。
それから神楽は大きく息を吐いた。妙に熱っぽく。
夢の中の私は神楽に何をしているんだ。自分なのにすごく羨ましい。
私の額から汗が次々に流れ落ちる。部屋の暑さのせいだけではない。神楽にのまれている。
ふらふらと前に出だした右手を左手で強く掴んで、首を振った。
「いけない」
このまま神楽に目を奪われていても苦しいだけ。気持ちを切り替えるべきだ。
よし、もう冷房を点けよう。そしたら部屋を出て、冷たいシャワーを浴びて頭を冷やそう。これ以上神楽を見ていたらとんでもない事をしてしまい
そうだ。

冷房のスイッチを手に取ったとき、すぐ横のベッドで気配が動いた。見ると神楽が半身を起こしている。
寝ぼけているのか視界が定まってはいない。
「神楽。起きたのか?」
「…う〜ん」
神楽は返事をするでもなく、しばらくぼーうっとしたまま頭を揺らしている。
それから緩慢な動きで私の方に幼い表情を向けた。
「暑いよぉ」
そう小さい声で呟くと、いきなりジーパンのジッパーを下げ始めた。

「かかかか神楽っ!!!!」

どうして下からなんだ!!?


 

203 名前:誘惑の眠り姫[sage] :2005/10/23(日) 19:37:51 ID:9dzsIlRL

私はスイッチを放り投げて大慌てて神楽に駆け寄り、その両手を押さえ込んだ。さしたる抵抗もなく神楽の腕は動きを止めた。ほっと一息をつくと神楽の手が離れて今度は上からごそごそと音がする。
顔を上げると神楽のブラジャーがすぐ目の前に飛び込んできた。



「だめだって!!」
神楽はTシャツを脱ぎ捨てようとしている。私は完全に狼狽してしまって神楽の腕を掴んだままベッドに押し倒した。そこまでされても神楽の目は焦点が合ってなく、意識はまだ夢の中にいるようだった。
「んん…ぅ…」
やがて神楽は再び目を閉じた。私のすぐ下で。
「………」
ごくりと自分の唾を飲み込んだ。神楽はもう胸の上までTシャツが捲りあがってしまい、ジーパンだってジッパーが完全に降ろされて腰の下のあたりで引っかかっていて、半脱ぎ…いや半下着状態になっている。
汗がにじみ出てる胸の大きなふくらみや、内ももにある水着の日焼け跡がはっきりと確認できた。
そして私はそんな神楽の上に覆いかぶさっている。自然、呼吸が荒くなった。
真昼に至近距離で見る神楽の艶かしい姿に、私の心臓は大きく波打ち、思考もままならない。
朦朧とした頭の中に、仲の良いクラスメートが浮かんできた。

あぁ…ちよちゃん、水原さん、智さん、大坂さん。もう私、神楽を好きなようにしてもいいかな?
心の中のちよちゃんが一点の曇りもない笑顔で呼びかける。

"榊さん頑張ってください"


 

204 名前:誘惑の眠り姫[sage] :2005/10/23(日) 19:42:18 ID:9dzsIlRL

…よし、まだ理性を保てるぞ。
私は歯を食いしばって腕を伸ばす。神楽の顔が視界に入った。
途端に再び私の理性が揺らぎ始める。何て脆いんだろうか。でも、仕方がないんだ。
こんな可愛い寝顔をしているのに、服がはだけているなんて…反則だ。
神楽の唇はもうすぐ目の前にある。ピンク色の薄い唇に魅入られてこれくらいはと人差し指で触れてみると、神楽の湿った息が指に伝わって
きた。くすぐったい快感に堪らなくなって指を入れてみると、神楽はそれを柔らかな唇で優しくはさんでくる。そのまま舌を使って私の指の先っ
ぽをちろちろと舐めまわしてきた。

あ。これは……やばい。

本当に気持ち良すぎる…というよりも、だめだだめだだめだって神楽!!

「〜〜〜〜っ」
神楽の口の気持ちよさに、私は声にならない悲鳴を上げた。
もう片方の手を自分で噛んだり、窓から空を眺めたりして気を紛らわそうとしたが全く無意味だ。神楽の舌使いはより激しいものになってくる。
それどころかさらに指を深く咥えこんできて、ちゅぱちゅぱと水音を立てながら口内全体で吸いついてきた。
これはひとたまりもない。私は膝をついた。
「う…かぐ、ら…ホントに、離して…」
息も途切れに懇願するが、神楽は幼い子供のような無垢な寝顔で私の指を咥えて離そうとしない。
私の全神経は右の人差し指に集中してしまって、そこから舐められているのがただの指とは思えないほどの強烈な快感が脳に伝達されて
背筋をぞくぞくと駆け巡った。
もう本能を抑えるのに精一杯のはずなのだが、それでも心のどこかで、今度起きてるときにやってもらおう、
なんて冷静に考えている自分もいる。人間って不思議だ。あれ?こんなこと考えてる時点でもう私はおかしいんじゃないのか。だめだ、よく分
からない、それにしても、指が気持ちいいな…。


 

205 名前:誘惑の眠り姫[sage] :2005/10/23(日) 19:43:48 ID:9dzsIlRL

しばらくの間神楽は美味しそうに私の指を口内でもてあそんでいたが、ふつりと舌の動きが止まった。
息を乱しながらゆっくりゆっくりと指を抜き取ってみると、細い透明な糸が神楽の唇と私の人差し指をつないだ。私の指は濡れてべとべとになってしまったが不快感なんてまるでなかった。
それどころか誘われるようにその指を口の中に含んでみる。
「…ん」
神楽の味が口の中いっぱいに広がった。
その瞬間、私の体温は一気に上がった。激しい運動の後のように心臓が脈打ち、汗が噴出す。
身体が熱くて仕方がない。
私の下には神楽。
眠っている神楽。
大好きな神楽。

限界だった。
これ以上我慢すると、もうどうにかなってしまいそうだった。
右手で神楽の頬を撫でて、左手で腰のラインをそっと確かめる。
「…ふっ…」
神楽の口から息が漏れた。そんな小さな反応も愛しくてたまらない。
腰に触れていた手を神楽のお腹に持っていき、吸い付くような肌の感触を楽しむように存分に撫でまわす。

すまない神楽。結局私は自分に負けて、君の寝込みを襲うような卑怯な真似をしてしまいそうだ。
…あとでいくら殴ってくれてもかまわない。だから、もう…もう……

もうこのまま。私は腰に触れていた手を下へ動かそうとした。
そのとき神楽が呟いた。

「榊…好き…」


 

206 名前:誘惑の眠り姫[sage] :2005/10/23(日) 19:44:46 ID:9dzsIlRL

「……」
その言葉に私は我に返り、手の動きを止めて神楽を見つめ直した。
神楽はやっぱり眠っている。その顔はとてもとても穏やかなものだった。
眠っている間に伝えられた言葉だからこそ偽りのない純粋な神楽の気持ち。
それは私の邪な欲望を嘘のように跡形もなく吹き飛ばしてくれた。
私は、完全に目が覚めた。

ありがとう、神楽。

私は小さく神楽に囁いて、神楽に顔を近づけた。
キスだけ、触れる程度のキスをしたらそれで終わりにしよう。
そしたら神楽が起きるのを静かに待つから。
せめてこれくらいは許してくれ。
あと少しで神楽の唇に届く、ところだった。

「んん…?」

神楽が、目を覚ました。
数センチの距離で目と目が合う。今度の神楽は目でしっかりと私をとらえていた。

「…榊。あんた何を…?」
「いや…その…」

神楽の顔が引きつる。そして違和感に気づいたのだろうか、自分の体の方に目を向けた。
胸までたくし上げられたTシャツと腰までずり下げられたジーパン。神楽の顔がみるみると赤くなる。
その間に私はおそるおそる神楽との距離をあけた。予想通り神楽が大声で怒鳴ってきた。


 

207 名前:誘惑の眠り姫[sage] :2005/10/23(日) 19:46:45 ID:9dzsIlRL

「榊ぃ!!何で私がこんな姿してんだよ!!?」
「…あの、神楽が脱いだんだ。ほ、ホントに」
「ん・な・こ・と…あるわけねぇだろっ!!もっとマシな言い訳かませねぇのか!?………んん?」
神楽がまた何かに気づいた。嫌な予感がして神楽の視線の先を辿る。そこにはテーブルの上に…。
「……おい、あんな所にカメラなんてあったか?」
神楽がわなわなと拳をふるわせた。
「誤解だ!落ち着いて、私の話を…」
「バカ!何が誤解だ!!人が寝ている間に好き放題しやがって!!あ〜そうか!普段からどうせそんなことばっか考えてんだろ、変態!何が
クールだよ、あんたなんかただのムッツリスケベじゃん!!」

神楽の一方的な言いがかりに、ぷつんと私の中の何かが弾けた。

「…神楽がさんざん挑発してきたくせに…」
「あぁ?」
「…私は頑張って我慢してたのに…」
「おい、榊?」
「それなのに…それなのに…」
私の異変に神楽の顔から一気に血の気が引いていく。
神楽は本能的に危機を察したのか、ベッドの上をじりじりと後ずさった。
「…榊。落ち着け、な?私もちょっと言い過ぎた。ここは冷静に話し合おうぜ」
「いや…もういい。寝ている神楽にそういう事をしたいと思ったのは事実だ」
「わ、私もいきなり寝ちゃったのが悪かったから」
「だけど今はいいよね?」
自然に笑みがこぼれた。
「え?」
「今は起きてるから、もう我慢しなくていいんだよね?」
微笑みながらベッドに乗り上げる。神楽が激しく動揺した。
「榊!ま、待って!!」
「いや。待たない」
言って神楽に全体重をかけて乗しかかった。
神楽はばたばたともがいて何やら叫んでいたけど、そんなうるさい口は自分ので塞いでしまう。
やっと抱きしめれた神楽の熱は私の体に心地よく馴染んでいく。
神楽の抵抗は少しずつ弱まっていく。陥落するのも時間の問題。
とにかく今までの分、しっかりと返してもらわなければ。


あぁ…それと。
「私も好きだよ。神楽」

(終)
 

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