144 名前:[サプライズ・アタック(前編)] ◆uS1Hx4I012 [sage] :2005/10/03(月) 00:49:51 ID:egymnVgR

(1/8)

(♪チャラッチャラ〜ッ……)

 俺は頭の中で『ピンクパンサー』のテーマを響かせながら、
榊さんの部屋に忍び寄る。
 ――同じ屋根の下で暮らすようになってから1年近く経つし、
そろそろ彼女をファーストネームで呼んでも良さそうなものだが、
俺の中ではまだ『榊さん』なのが、我ながら初々しい。
 最近は二人だけの会話で結婚式の日取りの事が話題に上るほどだというのに。
……結婚までに直るんだろうか、この呼び方の癖は。
 そんな事を考えつつ、俺は榊さんの部屋のドアノブを、音がしないように注意深く回した。
――本日のサプライズ・アタックに備え、ドアノブや蝶つがいには充分に油を注してある。
 ドアをわずかに開けると、榊さんがパソコンデスクに向かって画面に意識を集中している
様子が、見えた。好都合だ。
 俺は細心の注意を払ってドアを開け、ようやく通れる隙間を作ると、
彼女の背後へと忍び寄っていった。
 彼女の背後にたどり着くまで、実際はせいぜい十秒くらいだったろうが、
俺の主観ではその何倍にも感じた。
 俺は、サプライズ・アタックを完遂させる為の、最後の動作を実行した。

 

145 名前:[サプライズ・アタック(前編)] ◆uS1Hx4I012 [sage] :2005/10/03(月) 00:53:40 ID:egymnVgR

(2/8)

「だ〜れだっ?」
 俺はそう言って両手で、榊さんの豊かな乳房を両方とも包み込む。
「きゃっっ!!」
 彼女は可愛らしい叫び声を上げた。
 彼女は慌ててマウスを操作してページを切り換えようとしたが、
俺は彼女の手首をつかんでそれを妨げる。
――彼女は俺よりも少し背が高く、並の男より筋力も強いが、
それでも俺の筋力の方が勝っている。
 顔の印象と筋骨逞しい体格ゆえに、俺が『クマさん』の渾名を頂戴しているのは
伊達じゃない。

「どんなサイトを見てたのかな〜?」
 俺はちょっと意地悪な口調でそう言いつつ、画面を見た。
――今度はこちらがサプライズ・アタックを受ける番だった。

『もっと彼を気持ち良くさせるマル秘テクニック』
ttp://www.lovecosmetic.jp/column/sonota/karetec.html

 画面の上から1/4くらいには、大きなロゴと、
おおまかにリンク先を分類したメニューアイコンが並んでいる。
 そこから下の右側4/5くらいは選択した記事の本文を表示するスペースに
なっており、残りの左側1/5くらいは関連記事の一覧を示すコラムになっている。
 更に俺の視界には、画面だけでなく、パソコンの側に置いてある何冊かの本も
入っていた。

『GREAT LOVER―幸せな恋人になるための愛し方とSEXの方法―』
(ルー・パシェット:著,浅香 まりこ:訳)
『今夜から始める 大人の女の愛させる技術
 ―彼が離れられない、心とからだの磨き方』(桜井 秀勲:著)

等々。

 

146 名前:[サプライズ・アタック(前編)] ◆uS1Hx4I012 [sage] :2005/10/03(月) 00:56:46 ID:egymnVgR

(3/8)

「……さ、榊さん?」
 まさか彼女がそんな物を読んでいるとは思わなかった俺はうろたえ、
思わずそうつぶやいた。
 背後からでも、彼女が耳たぶまで真っ赤になっていることが分かる。

 榊さんは、消え入りそうなか細い声で応えた。
「あなたが……私をいつも気持ち良くさせてくれるから
 ……私を精一杯愛してくれるから
 ……私も、それに精一杯応えなければいけないと思って……勉強を……」

 それを聞いた俺は、彼女のそんな姿をいじらしく思い、
そっと抱きしめ、言った。
「ありがとう」

 一呼吸置いて、言葉を続ける。
「でもさ、そんな根詰めて勉強する必要は無いと思うな。先は長いんだから。
 焦らず、ゆっくりと覚えていけばいいと思うよ」

「うん……」
 彼女は、まだ恥じらいを帯びた様子で、そう応えた。

 俺は次になんと言おうか迷いながら、視線をあちこちに動かす。
その時、画面に表示された言葉の中の、一つの単語が目に入った。

『ローション』

 

147 名前:[サプライズ・アタック(前編)] ◆uS1Hx4I012 [sage] :2005/10/03(月) 01:00:13 ID:egymnVgR

(4/8)

 俺は榊さんに視線を戻す。

「とりあえずさ、今日はローションを使ったプレイの練習でもしよーか?
 お風呂場で。二人とも風呂に入ったばかりだけどさ」
「うん……それだったら……用意もできてる……」

 彼女は机の引出しを開け、プラスチック製と思しきオレンジ色の
小さなボトルを取り出し、机の上に置いた。
『ジェーリン』という商品名が読み取れる。
 彼女は再び俯き、黙り込む。おそらく、恥ずかしさで一杯の気持ちを堪えつつ、
これを買ったのだろう。

「これ、持ってて」
 俺はそう言って榊さんにローションの瓶を持たせると、
彼女を椅子ごと後ろに引き寄せ、彼女を一気に抱え上げた。

「きゃ」
 彼女は小さく悲鳴をあげる。
 彼女の髪が俺の顔の間近に来ると、シャンプーの匂いと彼女本来の匂いとが融け合い、
かぐわしく感じられた。
 体を密着させている部分からは、彼女の暖かさを感じる。
 俺の左腕は、彼女の腰のくびれ、お尻の重さと豊かさをしっかりと受け止めている。
 俺は、彼女の背中を支える右腕を少し動かし、俺の右の掌を彼女の右の乳房にあてがった。

「あぁ……」
 彼女は、陶酔とも安堵とも取れる小さな声を漏らす。
 俺は、半開きのままだったドアを己が右肩で押しのけ、
彼女を抱えたまま浴室へと向かった。

 

148 名前:[サプライズ・アタック(前編)] ◆uS1Hx4I012 [sage] :2005/10/03(月) 01:03:26 ID:egymnVgR

(5/8)

 俺は脱衣場で榊さんを降ろし、立たせたままで彼女の服を脱がせていく。
 Tシャツとジーンズを脱がせると、ブラジャーとパンティーが露わになった。
ブラジャーも脱がせてしまうと、大きな果実を思わせる彼女の乳房が露わになる。
 そして俺は、パンティーを脱がせようとしてかがみこんだ。

「ああ、濡れているね。しっとりしてる」

 そう言って上を見上げると、彼女の顔がほんのりと朱に染まっている様子が伺えた。
 彼女はローションの瓶を側の棚に置き、パンティーをかばうようにして両手を重ねるが、
俺は彼女の両手を優しく外し、パンティーをそっと下げる。
 愛液に濡れた茂みが、目の前に現れた。
 俺はそれをかき分け、彼女の陰唇に口付けする。母なる海を思わせる匂いと、
微かな塩味と少し強い酸味とを、感じ取った。

「は……あっ!」

 彼女は両手を俺の肩に置き、自らを支えた。俺は、ふさふさした顎鬚と頬髯
――彼女が『七つの海のティコ』のスコットお父さんみたいだと誉めてくれた――
で彼女の太腿をくすぐりつつ、舌で陰核を撫でる。
 ついに彼女は快感に耐えかねてひざまずいた。
そして、その黒曜石のような瞳で俺の瞳を捉え、言う。

「……あなたも……脱いで」

 彼女に促され、俺はしゃがんだままの体勢でシャツを脱ぎ、
ズボンのベルトとボタンを外した。
ズボンの下のトランクスは陰茎で押し上げられ、
テントを張ったような状態になっている。

 

149 名前:[サプライズ・アタック(前編)] ◆uS1Hx4I012 [sage] :2005/10/03(月) 01:06:42 ID:egymnVgR

(6/8)

 俺が榊さんを支えつつ立ち上がると、彼女は俺のトランクスをゆっくりと下げた。
俺の陰茎は既に充分大きく、硬くなっている。

「こんなに大きなものが……私の中に入っていたんだ……」

 初体験の時、セックスに対する彼女の不安を和らげる為に、
光源は柔らかな光を放つ卓上電灯のみにして、
互いの下半身をタオルケットで覆い隠した状態で、結合した。
 それ以来、この一年余りそういうやり方が常だったので、考えてみれば、
彼女が怒張しきった状態の俺の陰茎をつぶさに観察するのは、
これが初めてかもしれない。

 彼女は再びひざまずき、俺のトランクスを下げきった。
その動きに合わせて、俺は足を交互にあげる。二人とも一糸纏わぬ姿になった。
 彼女は右手で俺の陰嚢を包み込み、左手で俺の陰茎を握る。
そして、おそらくはさっきのWebサイトや本で得た知識を思い出しながら、
俺の亀頭を口で含もうとする。
しかし俺の陰茎が怒張しきって反り返っているため、
俺が立った状態ではなかなか上手くいかない。
 彼女が焦りだしたのを見て、俺は言った。

「つ、続きはお風呂場の中でしよう」

 俺は風呂場の引き戸を開け、右腕を彼女の肩に回し、
左手でローションの瓶を引っつかんで、一緒に風呂場へ入った。
ローションをシャンプーの隣に置き、引き戸を閉める。
 彼女に促されて、俺は風呂場の床に敷いたポリエチレン製の
浴室用マットの上に横たわり、彼女は俺の体の左側に座り込む。
――広い風呂場にしといて、本当に良かったと思う。

 

150 名前:[サプライズ・アタック(前編)] ◆uS1Hx4I012 [sage] :2005/10/03(月) 01:09:27 ID:egymnVgR

(7/8)

 予定では俺がリードしつつ、お互いの体にローションを塗って楽しむ
つもりだったが、今のところ俺がリードされる格好になっている。
榊さんはさっき上手くいかなかった事を再び試みようとした。

「……え〜っと、無理しなくて、いいんだぞ?」
「大丈夫。なんだか……あなたのものが自然にいとおしく感じられるから……」

 彼女はそう言ってかがみこみ、左手で俺の陰嚢を包み込み、
右手で俺の陰茎をつかんで少し起こした。
さっきよりは体勢が楽になったらしく、今度は難なく、
彼女の口は俺の亀頭を包み込んだ。

「う……っ!」

 初めての感覚に、俺は快感の呻きを漏らした。
彼女の動きが止まり、俺の方を心配そうに見る。

「ああ、大丈夫だ。その調子で……続けてくれ」

 彼女は俺の表情に気を配りつつ、行為を再開した。彼女の舌が、
まるでアイスキャンデーを舐めるかのように、俺の亀頭を這いまわる。

「棒の根元を少しだけ締めてくれ……」

 彼女は俺の陰茎を握っている右手の小指に、少しだけ力を込める。
そうすると、彼女の膣の入口で締め付けられるのと似た感覚が襲ってきた。

 

151 名前:[サプライズ・アタック(前編)] ◆uS1Hx4I012 [sage] :2005/10/03(月) 01:15:39 ID:egymnVgR

(8/8)

「玉の方もマッサージ……あ、いや、揉むと言うよりは、
 指を震わせると言う程度のごく弱い力で……」

 俺の言葉に従い、榊さんは素早く左手の力を調節する。
俺の両方の睾丸に、何とも言えない心地良さが伝わってきた。
快感が急激に高まり、鼠径部に甘く疼く様な感覚
――精子が精巣上体から出て精管を抜ける感覚――が広がる。
 予想外に早い射精の前兆に、俺は慌てた。
「あ、ダメだ、もう出ちまう……っ! 榊さん、口を離……」

 あいにく、警告は間に合わなかった。
 俺は彼女の口の中に思いっきり射精してしまっていた。
 ゴホゴホッ、と、彼女は激しく咳き込む。

「だ、大丈夫か?」
「大丈夫……あんまり勢いが良かったから……ほんの少し気管に入っただけ……」
 彼女はそう言って蛇口の栓をひねり、口に水を含んで、うがいをする。

「ごめん……」
「気にしないで。私が自ら進んでした事だから」
 ようやくひとここち着き、彼女は口の端に残っていた俺の精液を拳で拭い取り、
味を見るようにして舐め取った。

「なんだか……妙な味。でも、悪い気はしない」
 彼女は微笑を浮かべて俺を見る。その表情に、俺は救われる思いだった。

 俺は起き上がって、言う。
「さて、今度は俺が君を気持ち良くする番だ。そうしないと不公平だからね」

 俺はローションの瓶を手に取った。

[後編へ続く]
 

160 名前:[サプライズ・アタック(後編)] ◆uS1Hx4I012 [sage] :2005/10/09(日) 04:38:34 ID:P8oJyBXh

(1/7)

 俺は、軟らかめのプラスチックで作られたローションの瓶を逆さにし、
すぐ側に座っている榊さんの乳房の上に瓶の口を近づけた。
瓶を握る手に力を込めると、トロリとしたローションが彼女の乳房を覆っていく。

「あ……」

 彼女は微かな呻き声を上げる。
 俺は彼女の乳房の谷間から溢れ出すまでローションを搾り出すと、
瓶をシャンプーの側に戻し、両手で彼女の乳房を揉みほぐし始めた。

「う……ふぁ……」

 ローションにまみれた指で両方の乳首を捏ね回しつつ、
乳房をさらにじっくりとマッサージする。

「はぁ……んあぁ……」

 彼女の嬌声の高まりと共に、俺は両手を別の場所に動かしていった。
右手で首筋や脇を、左手で腹や腰を、愛撫していく。

 

161 名前:[サプライズ・アタック(後編)] ◆uS1Hx4I012 [sage] :2005/10/09(日) 04:41:01 ID:P8oJyBXh

(2/7)

 榊さんは焦点の定まらない目をしていたが、ローションの瓶に目をやると、
震える手でそれをつかみ、俺の手が止まっている隙に、俺の股間にローションを
思い切り垂らした。

「う……」

 俺が完全に動きを止めると、彼女は両手で俺の陰茎と陰嚢を包み込んだ。

「あうぅ……」

 俺が呻く様子を見ながら、彼女は両手を、もどかしくなるくらいゆっくりと、
妖しく動かす。
 尿道に残っていた精液までもが搾り出され、ローションに混じり、栗の花に
似たあの独特の匂いが再び漂う。
 その匂いに触発されたのだろうか、彼女は微かに淫靡な表情を浮かべる。
 この一連の過程の間に、俺の陰茎はすっかり大きさと硬度を取り戻していた。

 彼女は俺の陰茎を手で捕らえたまま体を密着させ……膣内に俺の陰茎を、
一気に迎え入れた。

 

162 名前:[サプライズ・アタック(後編)] ◆uS1Hx4I012 [sage] :2005/10/09(日) 04:43:55 ID:P8oJyBXh

(3/7)

「ああっ!!」
「ううっ!!」

 膝立ちになっていた俺は、彼女と共に快感でへたり込んだ。

 しばらくそのままの体勢だったが、脚に少し無理が掛かる体勢だったので、
俺と彼女は滑らないように気をつけながら、体勢を整えた。
 結果、俺が胡座をかいている状態に、彼女が向かい合って俺と体を密着させながら、
俺の腰に脚を絡めて座るような格好になった。
 この体勢だと、彼女の豊かな乳房が、自然と俺の目の前に来る。
 俺はローションにまみれた彼女の乳首を吸いつつ、両手で彼女の腰やお尻を
ローションに馴染ませるようにして、さすった。

「はっ……はあぁっ……!!」

 彼女は俺の首に両腕を回し、俺の頭を抱える。
 俺は、彼女の尾骨がある辺り――お尻の割れ目が始まる辺り――に、
指を滑り込ませた。

「はうぅっ!!!」

 彼女は雷に撃たれたかのように体をびくんと震わせ、仰け反る。
 俺は両手の小指をお尻の割れ目に軽く添えるようにして、彼女のお尻の両側を
丹念に揉み、彼女の腰と俺の腰の密着度を更に高めた。
 彼女のお尻は、大きな生命の宝珠を両腕に抱えているようなどっしりとした
感触を、俺に与えた。

 

163 名前:[サプライズ・アタック(後編)] ◆uS1Hx4I012 [sage] :2005/10/09(日) 04:46:37 ID:P8oJyBXh

(4/7)

 俺の陰茎が彼女の膣内に深々と突き刺さり、俺の亀頭が彼女の子宮口を突き動かす。
 彼女の子宮が打ち震え、膣口が俺の陰茎の根元を締め付けてきた。

「ふあぁっ!!……んあぁっ……!!!」

 上を仰ぎ見ると、彼女が頭をゆっくりと揺らし、陶酔の表情を浮かべていた。
 さらりとした唾液が彼女の口の端から漏れて首筋を伝わり、俺の頬に触れる。
 彼女の長い黒髪が乱れて、俺の頭にかかる。
 それらの全てをいとおしく思った瞬間、俺は決壊し、彼女の体内にどばどばと
精を吐き出していた。二発目なのに、それこそ体の何処にこれだけ隠れていたの
かと訝るほどに。
 共に絶頂に達した直後、俺と彼女はしばらくそのまま抱き合っていた。

 彼女が俺の名を呼び、俺も彼女の名を呼ぶ。

 ――後で思い返してみると、俺が自然に彼女をファーストネームで呼んだのは、
どうもこの時が初めてだったようだ。

 

164 名前:[サプライズ・アタック(後編)] ◆uS1Hx4I012 [sage] :2005/10/09(日) 04:51:29 ID:P8oJyBXh

(5/7)

 どれくらいの間ぼんやりしていたか分からないが、俺と彼女はようやく気を
取り直し、シャワーでローションを洗い流した。
 そして風呂場から上がり、互いの体をバスタオルで拭きあった後、下着と
寝間着を身に着け、脱衣場から出る。
 彼女が、電源を入れっぱなしだったパソコンのOSを終了させに行っている間、
俺は一足先に寝室に向かったのだが……
 俺はそこで今晩二回目のサプライズ・アタックを受ける事になる。

「げ」

 いつの間にか、居間で寝ていたはずのマヤーが、僅かに開いていた寝室のドア
から中にはいり、ベッドの上に身を横たえて陣取っていた。

 ――数年前に初めてマヤーの事を知った時、俺は大いに驚いたものだ。
 何でも、榊さんの親友の父君が政財界に大きな影響力を持つ美浜グループの総帥で、
その人が環境省の高級官僚に働きかけてくれたおかげで、彼女とマヤーが一緒に
いられるようになったとの事。
 マヤーが西表島から東京まで彼女を追ってきたという、これまた俄かには信じ難い
事実もあり、
「無理矢理引き離してもまた同様の事が懸念される」
と、最初にマヤーを診察した石原先生が件の高級官僚に進言してくれた事も、
良い結果を招いたのだろう。
 ともかく、マヤーの子孫存続の為、榊さんが獣医学科卒業直後に環境省の役人と
なって西表島に赴任する事を条件に、特例で飼育許可が下りたのだという。
 その事は、俺と彼女が一緒に西表島へ移住する要因にもなった
(マヤーにとっては帰郷だが)。

 

165 名前:[サプライズ・アタック(後編)] ◆uS1Hx4I012 [sage] :2005/10/09(日) 04:54:48 ID:P8oJyBXh

(6/7)

 高校時代から獣医目指して勉強していたとはいえ、榊さんは一介の獣医学生
に過ぎなかった。
 彼女の知識と力量だけでマヤーの面倒を見るのはいささか荷が重い、という
わけで件の高級官僚からマヤーの保護を手助けする任務を与えられたのが、
彼女そして石原先生と同じ大学の獣医学科出身で当時環境省に務め始めたばかりの、
俺だったりする。

 マヤーはいわば、俺と彼女の縁結びの天使、なのだが……。

 普通の猫とイリオモテヤマネコは、ホモ・サピエンスとホモ・エレクトゥス
ぐらいに違っており、普通はそこらへんの猫の方がイリオモテヤマネコより
知能が高い。
 だがマヤーはイリオモテヤマネコとしては破格の知能を持ち、そこらへんの猫
よりも明らかに頭が良い。――まあ、そうでなければ、西表島からはるばると
高校時代の榊さんを追ってくる事など、不可能だったろうが。
 ともかく、野性の勘だか破格の知能のせいだか知らないが、気取られないように
配慮した上で俺達カップルがセックスしても、直後から数時間以内ならほぼ確実に、
マヤーはそれに感づく。
 で、こういう時のマヤーはいつも機嫌が悪い。
 普段は俺におとなしく頭を撫でさせていても、こういう時は迂闊に近づくと
引っ掻かれかねない。

 榊さんとの今に至る深い関係を築くのに七年余りの歳月を費やし、
性生活を楽しめるようになったのはせいぜい一年余り前からだが、
そこまで時間がかかったのはこれまたマヤーのせいだったりする。

 

166 名前:[サプライズ・アタック(後編)] ◆uS1Hx4I012 [sage] :2005/10/09(日) 04:57:32 ID:P8oJyBXh

(7/7)

 俺はマヤーに睨まれたまま、その場を動けずにいた。
そこへ、彼女が戻ってくる。
 彼女の姿を見るや否や、マヤーはベッドから飛び降りて疾走し、
彼女の胸に飛び込んだ。

「ふふっ。また妬いているんだ、貴方に」

 マヤーを抱きながら、彼女は微笑む。
 きまりが悪いような感じがして、俺は思わず頭を掻いた。

 俺と彼女、そしてマヤーはベッドに入った。
 だが、俺と彼女の間にマヤーが割って入る。
 俺が彼女に近づこうとすると、マヤーが低い唸り声を立て、俺を威嚇する。
 ダブルベッドなので広さは充分なはずなのだが、なぜか肩身が狭いような気がする。

 やれやれ。

 今夜はもう、大人しく眠るしかなさそうだ。そうしている限りは、マヤーもおとなしいし。

 二回出せたし、今夜はこれで良しとしよう。


[完]
 

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