80 :The Secret among the Chicks 第三部 :2010/08/09(月) 22:21:48 ID:PmCVzXEA
あのひとの、大事なひとが、死んだ。
かつて私からあのひとを奪ったあいつが、死んだ。
私の『ライバル』を公言していたあいつが、死んだ。

涙は、出なかった。
あのひととずっと連絡は取っていなかったし、それに、私の知らないところであのひととあいつは、付き合っていたのだ。
こんなだまし討ちのような真似をするあいつは、もう友達じゃないとまでは思わなかったけれど、なんだか少し距離を感じる奴にもなっていた。

「榊…。」

あのひとは、私の顔を見るなり、言った。
辛そうなその顔は、だけどどこか、私の見たかった顔でもあった。
それがなんだか、自分というものがとても悪い人間であるかのように思えて、私の顔はきっと強張っていたに違いなかった。
あのひとの目は、まるで飼い主に置き去りにされた子犬のようで、私の心をぐさぐさと刺した。
ハートの端が、どこか痛んだ。

だけど私は、またあのひとに惹かれていく自分にも、同時に気が付いた。
あのひとがまたフリーになったということは、どこか嬉しかった。
ともだちが死んだというのに、そんなことを考えている自分が、少し嫌だった。

けれど私たちは、いつの間にかホテルに入っていた。
ただ話を聞くだけ、何もしない、そうは言っていたけれど、そんなはずはなかった。
ここまで来ておいて何もしないなんて、それは私に対する冒涜でもある、そう思った。

ベッドに座った私の膝にすがって泣くあのひとは、まるで子供だった。
あいつの思い出を、私の知らない思い出をひとつひとつ話してくれたあのひとは、すごく幼く思えた。
黒いスーツもどこか七五三の衣装のように、私には思えた。

私はあのひとの頬にそっと手を触れ、唇を近づけた。
それが、合図だった。
私たちは今また、男と女に戻ったのだ。
高校生の頃に、戻ったのだ。
それが、一抹の寂しさと現実のどうしようもなさを、私の脳裏に焼き付けた。
83 :The Secret among the Chicks 第三部 :2010/08/11(水) 23:30:14 ID:JIEWfwd6
「ン…ん…ッ…!」

二人の唇が、重なる。
私たちは、互いの唾液をペチャペチャと犬のように音をたてて味わう。
舌が、絡み合う。

温かい互いの舌の温度が、心地よい。
あのひとの存在が、心地よい。
一度離れた相手だけれど、また近くにあのひとを感じられることが、嬉しい。

「好き…。」

私は後藤君の耳元で、そっと囁く。
好きなんだ…後藤君が好きなんだ。
やっぱり、私には後藤君しかいないんだ。
私がいちばん好きなのは、後藤君なんだ。
私という存在に欠けた部分、それを補ってくれるのは後藤君しかいないんだ。

「あ…はン…ン…!」

だから、私の喪服の背中のジッパーを後藤君が下ろすのも、嫌じゃなかった。
密着した胸と胸の間のブラの、ホックをはずされるのも嫌じゃなかった。
地味な白い下着を、一応レース使いではあるけれど、服を脱がされることなんか考えないで着てきた下着を見られるのだけは、少し恥ずかしかった。
指先から半袖の位置までで止まっている日焼けを見られるのも、少し恥ずかしかった。
後藤君の上着のラペルの先が肌の当たるのが、こそばゆかった。
胸に熱い唇が触れ、ちゅっ、と吸われる感触が、懐かしかった。
85 :The Secret among the Chicks 第三部 :2010/08/13(金) 21:22:55 ID:3DqCkhCC
「あ…あアあああ…ッ…!」

半分ずり下ろされた喪服が、一瞬腰骨に引っかかって、ぱさっと落ちる。
後藤君の指が、既にホックを外されたブラと身体の間に、下から入ってくる。
胸を全体的にさわさわ撫でられて、電流が私の背筋をビリビリと走る。
頭の奥が、痺れそうになる。
ムズムズと、太股の間に汗がしたたるような感覚が私を支配する。
後藤君の手が胸の先端に触れる度、熱い吐息が私の喉を通り抜ける。
なんだか、息が甘酸っぱくなるような気がする。

「ンッ…ン…んンンン…ッ…!」

舌がまた、互いの口の中を犯し合う。
好きな人の唾液って、こんなに美味しいんだ…。
こんなに狂おしいのに、ずっと味わっていたいのに、ずっと忘れてたんだ…。
誰かに…具体的には神楽に後藤君の心が移ってしまった辛さで、もう恋なんてしないなんて誓ったときに、全部忘れようとしてたんだ。

「あアアあああッ…は…あッ…!」

一方で、心臓の破れそうな程のドキドキが、指先から後藤君にも伝わっているに違いない、と思う私もいた。
別々の事を右脳と左脳が考え、それが脳梁を越え活発に行き来しているのが、私にはよくわかった。
愛欲と理性が、私の中で、混ざりあっていた。
90 :The Secret among the Chicks 第三部 :2010/08/24(火) 11:58:06 ID:IHALMAlW
榊のナカは、相変わらず狭くて。
中指はすんなり飲み込まれ、潤滑液はもう手首まで滴る程分泌されていたけれど、人差し指までは榊は痛がって。
それでも第一関節くらいまで入れたら、ひどい抵抗に指が押し戻されて。

「んあっ…あああああッ…あンン…ッ…!」

所謂Gスポットに指先をやると、榊の背中はイメージに合わぬくらい小さく可愛らしく震えて。
奥底から絶え間なく液が漏れ出、俺の指の動きに合わせ淫らな水音が部屋に充満して。
クチャ…ヌチャと、濡れた粘膜を、榊の秘所を俺は優しく、優しく掻き回して。
少しずつ榊が広がっていくのが、よくわかって。

「んンン…ッ…あン…んッ…!」

愛する人を失った直後、もう別の人と躰を重ねている。
神楽の死を未だ現実として受け入れられない気持ちと、その上で榊を愛しく思う気持ちと、それが俺の中で交錯して。
結果的に俺から裏切った相手がまた俺を受け入れてくれた事実が、戸惑いと嬉しさを俺に与えてならなくて。
いくらでも、榊を感じさせたくて。

「は…ンン…ッ…!」

はやる気持ちにブレーキをかけながら、俺はコンドームを付けた。
榊を、大事にしたかった。
同じ思いは、繰り返したくなかった。

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