27 名前:滝野智の〇〇〇[sage] :2006/03/18(土) 00:08:47 ID:VGv8TaFT

 とあるお昼時のお話。

三日にわたる試験も今日で終わり。試験は午前中のみ行われ、その後簡単なHRを済まして即
下校となった。
解放された生徒達は早々に鞄を持って教室を出て行き、どの教室も午後はがらんとしている。
しかしそんな中、一つだけ何やら騒がしいクラスが存在していた。もちろん、ご存知のあのクラス。
そこではお馴染みの6人の女子高生達が机を寄せ合って昼食をとっていた。
笑顔で何か話しているちよと智。横で微笑みながらその話を聞いている榊。隣で山積みになったパン
をバクバクと食べる神楽。それを恨めしそうに睨む暦。メロンパンを幸せそうに頬張る大阪。
彼女らは皆仲良くお昼を共にしていた。

その時までは。 
 

 

 

 

28 名前:滝野智の〇〇〇[sage] :2006/03/18(土) 00:11:31 ID:VGv8TaFT  

「ふぅ…」
榊は食べ終えた弁当をナプキンで几帳面に包むと小さく溜息を吐く。どうやら疲れているらしい。
少しだけ首を傾げると、自分の斜め向かいに座っている智に、ちらりと視線を送った。
「ん?」
「あ…いや……」
その視線に気づいた智と目が合うと、榊は真っ赤になって顔を背けた。
「なぁに?榊ちゃん?」
「……えっと…」
もじもじとして口ごもる榊に、智は笑顔で先を促す。
「どうしたのよ榊ちゃん。私に何か言いたいことがあるなら遠慮なく言ってごらんなさい!」
そう言って智は自分の胸をドンと叩く。珍しく榊が自分から話しかけてくるのが嬉しいのだ。
「あ…あの……、こ、この前してくれたアレ……。できたら…ま、またシテ欲しい、なって…」
榊は智をチラチラと見ながら遠慮がちに言葉を紡ぐ。頬を染めながら上目づかいに見つめてくる
彼女の姿は、同性でもドキリとするくらいの色気があった。
「この前?…あ!あ〜、アレね!なぁに榊ちゃん、癖になっちゃった?」
恥ずかしそうに小さく頷く榊。それを見て智は楽しそうに大声で笑った。
「も〜、榊ちゃんったら可愛いなぁ!そんなに遠慮しなくても榊ちゃんにならいつでもシテ
あげるのにぃ!」
「…す、すまないな…。こんなコトお願いしちゃって…」
「いいっていいって!それにしても…榊ちゃんまで虜にしちゃうなんて…さっすがよね!
私のテクニック!!」
そう叫ぶと、智は両腕をつき出してクリクリッと指を激しく蠢かせた。

ぶっ!暦は飲んでいたジュースを口から吹き出した。
ぎゅ!神楽は食べかけのパンを強烈な握力で握りつぶした。
ぽろ。大阪は唇ではさんでいたメロンパンの欠片を静かに床へ落とした。
??ちよはそんな皆の様子をキョトンと見つめていた。

「いやぁ、私ってばこう見えても器用だからね!特にこの繊細かつ大胆な指使いといったら…
ま、一度味わったらどんな相手もイチコロってヤツ!?」

「指使い…」暦の眼鏡がズルリと下がる。

「う、うん。智の指…本当に気持ち良かった…」

「気持ち…良い…」神楽は顔を赤らめた。

「んふふ。榊ちゃんにまで褒めてもらえると嬉しいなぁ。どうやら私のテクニックはもうプロの域に
達してるみたいね。ふむ。こうなりゃこの技術を活かして、商売でも考えちゃおうかなぁ」
智は腕を組むと真剣な顔で空を仰ぎ見る。

「うわぁ…智ちゃんすごいなぁ!」大阪は素直に感心して智を見つめた。が、暦と神楽は思いっきり
机に頭を突っ伏していた。

「私はプロの人を体験したことはないけど…確かにそれくらいのレベルはあると思う」
「あはは!ありがとね、榊ちゃん。でも榊ちゃんのは大きい割には意外と柔らかくて、とっても
揉みやすかったっていうのもあるのよ」
「そ…そうなのか…。自分じゃあまり触らないから分からないけど…」
「まぁまだ高校生だもんね。でも、榊ちゃんからお願いなんて初めてじゃん。やっぱり、試験勉強
とかでイロイロ溜まっちゃったのかなぁ〜?」
「あ…あの…その、ごめん。厚かましいとは思ったんだけど……」
「い〜のい〜の!私も日頃から榊ちゃんには宿題見せてもらったりしてるからね。大体、よみがケチ
で3回に1回は見せてくれないし。とにかく榊ちゃんには身体張らないとお返しができないんだから、
これくらいは…」 

29 名前:滝野智の〇〇〇[sage] :2006/03/18(土) 00:14:07 ID:VGv8TaFT  

「ちょっ、ちょっと待てぇ〜〜〜〜〜っ!!!!!」
と、我慢の限界が来たのか神楽が大声を上げて立ち上がり、二人の会話に割って入る。
「お前らななな何!?何言って!?え!?ちょっと……さ、榊ぃ〜!!!」
軽くパニくった神楽はやがて怒りを露わに隣に座る榊の胸座を掴み上げた。
「え…?か、神楽?どうしたんだ?」
「どうもこうも…ああアンタ……私というものがいながら…何を…ナニを……」
「???…神楽…何を言って…。と、とにかく落ち着いて…」
「お、落ち着いてられるか!バカァ!!よりにもよって…よりにもよって…」
神楽は呆然とする榊をグラグラと揺らし、そして涙ぐんだ瞳で智の方を睨みつけ、指をさした。
「何でこんな大バカと〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!!!!」
「何ぃ!!いきなり失礼な奴だなぁ!!」
「うるせぇ!…ちくしょう!ちくしょう!榊に限ってまさか……うっ、し、信じてたのにぃ〜!!」
すっかり正気を失った神楽はボロボロと大粒の涙をこぼしながら、榊をポカポカと殴り始めた。
「お、おい止めろよ神楽。何なんだよお前は急に。…はっは〜ん。さてはお前も榊ちゃんにシテ
あげたっかたんだろ?でも、残念でした〜。榊ちゃんはもう私のテクの虜だもんね」
「な、なにおぉっ!!だいたい…何でお前が榊にそんなコト…!」
「あ〜…。宿題のお礼とか言って私が無理やりシちゃった」
「んなっっ!!?」
ピタリと動きを止める神楽。


「ふふ…榊ちゃん。助かったよ。お礼にたっぷり気持ち良くしてあげる」
「だ、駄目だ…智…!私には神楽という決められた人が…」
「黙っときゃ分かりゃしないって。それに…神楽じゃ恥ずかしがってこ〜んなコトしてくれない
でしょ?」
「そ、そんな…!はぁっ!嫌…」
「ぬはは〜。よいではないか〜よいではないか〜」
「ああ〜…神楽……ごめんね………」
(以下18禁)


「よくねええええええ!!!ダメだああああああああああああああああああ!!!!!!」

神楽は膝をつき頭を抱えて絶叫すると、やがて榊にすがり付いて泣きじゃくり始めた。 
 

30 名前:滝野智の〇〇〇[sage] :2006/03/18(土) 00:18:07 ID:VGv8TaFT  

困惑する一同。とにかく榊は訳が分からないまま、そんな神楽の背中をあやすようにさすった。
「なんや。神楽ちゃんが壊れてもうた…」
「あ、ああ…アレだろ、退行現象。受験とかのストレスが原因じゃない?」
「神楽ちゃん…可哀想になぁ」
「大阪、よく見とけよ。明日は我が身だ。ボンクラーズはもう私達二人だけ…」
「うん…せやな。智ちゃん、私…神楽ちゃんの分まで頑張る!!」
勝手に追悼し始める智と大阪に、壊れていた神楽がやおら反応した。真っ赤になった目で睨みつける。
「お前ら…言いたい事いいやがって…」
「まぁ…落ち着けよ神楽。少し頭を冷やせって。確かにお前、動揺し過ぎだぞ」
さっきからの大爆弾発言祭りに脳内がフリーズしていた暦だが、異常なまでに取り乱した神楽を見て
ようやく冷静さを取り戻した。そう、暦以外に誰が智の暴走を止められるというのか?
拳を握り、深く息を吸い、ゆっくりと智の正面に向き直る。
「でも、そうなる気持ちは分かる。…あのなぁ、智。お前はもう少し考えて発言できないのか?」
「へ?私?何が?」
まったく悪びれずに聞き返してくる智に、暦は気勢を削がれてひるんだ。
「…その、なんていうか……そういうコトが、上手い、とか。いや、その悪いコトじゃないだろう
けど…何だ………ま、榊にし、し、シタとか…。こんなとこで…い、言うから」
いつもは歯切れのいいツッコミをかます暦も、やはりこういう事には慣れていないのかもごもごと
口を詰まらせていた。だがすぐに吹っ切る様にビシッと指を突きつけ、暦は親友に更生を促す。
「と、とにかくだな!ちゅ…中途半端な気持ちでそーいうコトをするのはよくないぞ!智!」
それを聞いて智は不思議そうに暦の顔を見つめながら口を開いた。
「え?何言ってんの?そもそもよみにはしょっちゅうシテあげてるコトじゃん」
「……………は?」
「だから〜、よみには昔から何回もシテあげてるじゃないの。この前もシテあげたばかりだし」



「ウソつけえええええええええええええええええええええええええええええええ!!!!!!!」


暦の生涯ベスト3に入る大絶叫が、校舎全体を震撼させた。 
 

31 名前:滝野智の〇〇〇[sage] :2006/03/18(土) 00:22:31 ID:VGv8TaFT  

「よみ…お前…」
「よみちゃん…そうやったんか。言ってくれればええのに…」
「違う違う違う!!誤解だって!コラ!智、お前…よりにもよってなんってとんでもないウソ
かましやがるんだ!!いい加減にしろよ!!私がいつお前に体を許した!!!」
「ウソじゃないってーの。アンタ満足した顔でまた頼むな、って言ってたじゃん」


「ふう…やっぱり智は最高に上手だなぁ」
「そう?ありがと、よみ」
「ねぇ、…もう一度だけ…シテくれないかな?」
「もう…さっきシタばかりなのに。よみはHね」
「だって…智があまりにも上手だから…私…私…!!」
「あん!ちょっとよみ…いきなり…!!」
(以下21禁)

「きっと…こんな風に…」
「てめえええ大阪ぁ!!!!!何勝手に想像してんだ止めろコラアアアア!!!!!」
頭を振りながら必死に否定する暦に、神楽が優しく笑いながら肩に手を置いた。
「よみ…いいじゃんか。…自分が好きになったんなら、自信を持てよ!!」
「…そうやで、よみちゃん!神楽ちゃんの言うとおりや。私達は応援するで」
「止めろーー!!そんな慈愛に満ちた眼で見んじゃねーーー!!!違う!無実なんだよーー!!
信じてくれーーーーー!!!!!ていうか何だこの展開はーーーーーー!!!!!」
「あはっ!そない照れんでもええのになぁ。でもよみちゃんのその反応、可愛くてえぇよ」
「照れてねぇよっ!!!何が、あはっ☆、だ!!無邪気に笑ってんじゃねぇぞ!!!」
わめきちらす暦を寂しそうな顔で見つめて、智は首を横に振った。
「はあ〜、こんな薄情な奴だったなんてねぇ。今までさんざんヤラすだけヤラしといてさ、
これだもん」
「そ…そんなにヤッてあげてたん?」
「そりゃ付き合い長いしな。…でもよみ、ひどいんだぜ?ヤッてる最中は、もっと内側!とか、
あん、そこ!もっと強く〜!とかいちいち注文うるさいしさぁ!?そんでヤリ終わったらコイツってば
あー、気持ち良かった(ハァト)とか言って自分だけすぐに寝ちゃうし!ひでーだろ!?私なんて
疲れて汗びっしょりなんだっつーの!!そのくせ私がシテ欲しいって頼んでも面倒くさいとか忙し
いとか言って、一度もシテくれたことないんだから!!」
幾つかの冷えた視線を暦は感じた。 
 

32 名前:滝野智の〇〇〇[sage] :2006/03/18(土) 00:25:54 ID:VGv8TaFT  

「よみ…そりゃよくねぇよ。にしても…な、生々しい内容だな」
「う〜ん。いくら二人が仲良いゆうても、それは横暴やな」
「だろ?コイツはそういう女だ」
「と〜〜も〜〜!!てめぇいい加減にしろよ〜!!!」
黒いオーラを身に纏い、指をパキパキと鳴らして暦がゆっくりと近づいてくる。
ここまで暴露(?)されては、最早ダブルチョップクラスの必殺技などで彼女の気は済みそうにない。
智はさっとその場から逃げ出して榊の背中に身を隠すと、暦に向かって舌を出した。
「もういいよ〜だ!よみなんかには二度とシテあげないもんね!…これからは榊ちゃんにシテ
あげるんだから」
そう言って榊の肩にまわす智の手を、神楽が思いっきり弾いた。
「ふざけんじゃねぇ!よみ、何とかしろよ!元はアンタがいつも受けてばっかなのが悪いんだろ!!
たまにはコイツを喜ばせてあげろよ!!」
「そうだぞ、よみ!たまには私に尽くせ!!」
「今夜あたりでもシテあげるんはどうや?」
「ななななな…何でそうなる!!!?」
ボンクラーズから矢継ぎ早に詰め寄られて圧され気味の暦は榊に助けを求める。
「さ、榊!こいつら無茶苦茶だ!!お前から何とか言ってやってくれよ!」
「…私もシテあげた方がいいと思う」
「そ、そんな!!お前までそんなコトを!!!」
「ほ〜れみろ!よみ!いい加減観念して…私に御奉仕しやがれぃ!!」
「〜〜〜〜っ!!」

ブチリと暦の頭の何かが切れた。

「あーーー、そこまで言うんならヤッてやるよ!!とことんヤッてやろーじゃないか!!!
よーし、智!今夜親に見られないように窓から私の部屋に来い!望み通りにシてやるよ!!
その代わりお前、メチャメチャにしてやる!!お前が途中でいくら泣こうがぜってええ止めねぇ
からな!!もう2,3日は足腰なんて立たなくしてやるから覚悟しろよ!!!!!」
「え?う、う〜ん…」
もうヤケクソ気味で宣言してしまってる暦なのだが、智は少し困った様子で言葉を返した。
「いやさ、よみ。実は私、されるのは初めてだから優しくしてくれない?」
「おまっ…!?」
真顔であっさりとそう言われて、暦は口を開けたまま真っ白になって動かなくなった。 
 

33 名前:滝野智の〇〇〇[sage] :2006/03/18(土) 00:30:02 ID:VGv8TaFT  

「あ〜、とうとうよみちゃんまで壊れてもうた」
「こいつ結構気分にムラがあるんだよ。ま…これも受験のストレスのせいなんだろーな」
「それにしても智ちゃん大人やなぁ。なぁなぁ、今度私にもそのテクニック教えてくれへん?」
「ん?別にいいけど。何なら大阪にもシテあげようか?極楽にイった気分になるぞ」
智は大阪の前で握るような仕草で指を蠢かす。

クイックイックイックイックイックイックイックイックイックイックイックイックイッ←指の動き

ごくっ。
「……その………考えさせてもらって…ええ、かな」
流石の大阪も顔を赤らめて智の突然のお誘いに戸惑っている。しかしやはり興味を引かれるのか
智の顔とその手を交互に何度も見比べてしまう。
「智…お前なぁ、見境なさすぎだぞ!お前も何その気になってんだよ」
そんな大阪にデコピンをかまして、呆れたような顔で神楽が智に問いかけた。
「こういう事っていうのは自分の大切な人だけとするべきだろ。誰でもいいのかお前は」
「何だよ〜、なんか私が遊び人みたいじゃねぇか。私だって別に誰にだってこんなコトしてあげてる
訳じゃないんだぞ!」
神楽の少し軽蔑を含んだ言い方に、智はムッとして言い返した。
「本当か〜?」
「当たり前だ!何が楽しくて好きでもない人にするかよ!今までシテあげたのだって、よみと榊
ちゃんくらいだぜ?」
ピクリとこめかみに青筋を立てる神楽と暦。それに気付くことなく思い出したように拳を叩く智。
そして再度衝撃の発言。

「あ!それと、お父さんもだ!!」

「「「えっ!!!」」」

   お   父   さ   ん   !   !   ?

胸を張って誇らしげに言った智だが、暦と大阪と神楽はそれぞれ信じられないものでも見たかのよう
に、それぞれの最大限の驚愕の顔を作った。 
 

34 名前:滝野智の〇〇〇[sage] :2006/03/18(土) 00:33:01 ID:VGv8TaFT  

「え?え?コイツ何言ってんの?」
「いや…私に聞かれても……。あ、あれだろ。いつものギャグだ」
「な、なんやそうやったんか。も〜智ちゃん、あまりびっくりさせんといてや〜」
はははと乾いた笑いを浮かべる三人。だが智はいたって真剣だった。
「ギャグじゃないよ。そもそも一番最初にシテあげたのがお父さんだったし」
「「「………」」」さーっと血の気が引いていく三人。
「小学生の頃からシテあげてたんだ。お父さん喜んでくれてね〜。智の力加減は絶妙だってよく
褒めてくれたっけ。んでいっつもお駄賃をくれたわけよ。あ、そうだ!ね、よみ。今度からお金
払ってよ!そしたらヤッたげる…ってお前ら、何ていう顔してんだよ?腹でも壊した?」
「ロリ…」と言いかけた大阪の口を素早く神楽の手が塞いだ。暦が引きつった顔で尋ねる。
「…そのお父さんって……ほ、本物…か?…ぱ、パパとかいうなよ…」
「?何わけ分からない事言ってんのよ?本物に決まってるでしょ?何、皆はシテあげないの?
私はそれが普通だと思ってたんだけど」

普通?

いやいや…んなわけねー。

コイツの親父って変っていうか………もうそれ、本物の変態じゃん……。

「どないしよう…け、警察に届けた方がええんかな…」
「……いや…色んな家庭があるってことで……済まない、よな。これ」
大阪と神楽がこの問題発言の対応について真剣に相談し合う中、暦はこっそり智に近づいて問いただした。
「おい、智。お前今のは洒落になってねーよ。あの親父さんがお前にそんなコトさせるわけねー
だろうが」
「え?何でよ。そりゃいつも元気そうにしてるけど、たまには疲れた顔して仕事から帰ってくるよ。
そんな時って触ったらガチガチに硬くなってるんだもん。そういう溜まったモンは抜いて楽にして
あげないとねぇ。ま、優しい娘の親孝行ってヤツ?」

ガチガチ。硬い。溜まる。抜く。

暦は激しい頭痛に一瞬視界が眩むのを感じた。 
 

35 名前:滝野智の〇〇〇[sage] :2006/03/18(土) 00:37:00 ID:VGv8TaFT  

「お前…こんな真昼間から何ってとんでもないカミングアウトしやがるんだ!!」
「何でキレるんだよ?」
「キレたくもなるわ!!!」
「おいよみ、やっぱこれ見過ごすわけにはいかねーよな。どうする?」
「ゆかり先生に相談した方がええんとちゃうか?」
「いや…それなら黒沢先生の方がいいだろ。何なら両方にでも…」
「…そうだな。智、私らと職員室行こうか」
「え?え?何で?」
「いいから来い!お前のためなんだよ!!」
「い、イヤだー!!何も悪いことなんてしてないぞー!!」
嫌がる智を力ずくでも連れて行こうとする三人。すっかり大騒ぎとなってしまったこの話題は最早
どうにも収拾がつかなくなってしまったように見えた。その時だった。

「あの…ちょっといいですか?」

さっきからずっと事態を静観していた美浜ちよが、おずおずと小さく右手を上げた。
「な、なぁに?ちよちゃん」
「え、とですね。皆さんさっきからとっても盛り上がっているんですけど…。何の話をしてるのか
私にはよく分からないんです」
しん、と水を打ったような静寂。

だけど、ちよちゃんはそんな大人の事情は知る由もないわけで。澄んだ眼をして答えをじっと待って
いるわけで。その顔は年相応に幼いわけで。

…言えない。言えるわけがない。

暦は汚れてもいない眼鏡を拭き始め、神楽は気まずそうに明後日の方向を向き、大阪は何も言わずに
にこにことちよちゃんに微笑みかけた。三人はそのまま何も喋らない。
「ああ…そうか」
智と榊は顔を見合わせて頷き、ちよの方を向いた。
「そうだな。お子様のちよちゃんにはまだ分からないだろうね」
「…ホントは…私達にもまだまだ早い話なんだけど…」
「ま、でも私達も受験やら進路やらで溜まっちゃうのよ。だから気持ち良くなって解消するの」
「お、おいおい智」
「そうなんですか。それで…結局何なんです?」
「…それは…」
と、榊がちよちゃんに笑顔を作って見せた。
それをハラハラと見てる暦と神楽。

ちょっと榊…お前ちよちゃんに何を言うつもり……!?

「智さんが肩を揉むのがとっても上手なんだって話してたんだ…」
「へっへ〜ん!もうプロ並みのテクニックなんだぞ〜!」


「「 マ ッ サ ー ジ だ っ た の か よ ! ! ! 」」


暦と神楽は机と椅子を巻き込んでけたたましい音と共に床へと倒れ込んだ。 
 

36 名前:滝野智の…肩揉み[sage] :2006/03/18(土) 00:41:20 ID:VGv8TaFT

「何だそのちょこちょこ見せる怪しげな手の動きは!!?」
「何って…肩揉むときってこう動かさない?」
「そんな指激しく動かすかバカヤロー!!」
「んだとー!これがツボ刺激していいんだぞ!!」
「榊ちゃんのが大きくて柔らかいってのは何やったん?」
「あぁ、榊ちゃんて肩幅が結構あるんだけど、触ってみたらハリがあって柔らかいんだ。
いや〜、揉み心地良かった。よみのはただのぷよぷよだけど」
「何だと…くっ、まぁいい。じゃ…じゃあ、お前のお父さんのが硬いとか抜くとかってのは?」
「やっぱ疲れが溜まると筋肉が強ばるじゃない?そこを私が揉みほぐしてその疲れを抜いてアゲル
ってわけ」
「な…な…なんじゃそりゃ!!」
「やっぱさー、いくらうら若き女子高生っつっても勉強ばっかじゃストレスも溜まるって」
「…そうだな。試験期間で机に座りっぱなしだったし…」
「ねぇ?やっぱこうした息抜きも大事なんだよ」

そうして語り合う二人を見て、安心したような拍子抜けしたような…とにかく暦と神楽は脱力して
へなへなと腰を床に着けた。

「まったく…いちいち紛らわしい発言ばっかしてんじゃねーよ!!ちくしょう!」
「そうだそうだ!!私はてっきり榊が…榊が……!はぁもう…心臓に悪い誤解させんなよ」
「誤解?…私にか?」
「っていうかさー、さっきからお前ら暴れまくってるけど…」
榊と智はまったく不思議そうな様子で、口を揃えて彼女らに尋ねる。

「「何を勘違いしていたの?」」

「「…」」

「え?お二人は別の何かと勘違いしてたんですかー?」

「「…」」

「あはは〜。ナニと勘違いしとったん?」

「「お前は同類だろうがっ!!!!!」」

ガバッと立ち上がってツッコむ二人。だんだん腹が立ってきた。
「そもそも智!お前が悪い!!ぜ〜んぶお前が悪いんだ!!!」
「はぁ?」
「そうだそうだ!!あんな言動でマッサージなんて分かるかボケェ!!!」
「ちょっと…何なの?何なの?」
「前から考えてたけど…ちょうどイイ機会だ…」
炎を背に暦と神楽はそれぞれ目尻を吊り上げた恐ろしい顔つきで首や拳の関節を鳴らし始める。
「だからぁ!い、いったい何な…」

「「一辺痛い目見せてやる!!!!!」」

「わわわ…何でよ!?お、大阪!逃げるぞ!!」
「え?何で私も…って、うわぁん!」
智は強引に大阪を引っ張って(巻き込んで)、そのまま教室の外へと駆け出していく。
「「待てーーーーー!!!」」
暦と神楽も二人を追いかけて土煙を撒き散らしながら廊下の向こうへと消えて行った。

後に残された榊とちよは何が起きたのかよく分からずに、廊下に響く怒声と悲鳴を聞きながら
ただずっと立ち尽くしていた。 
 

37 名前:確認中[sage] :2006/03/18(土) 00:47:02 ID:VGv8TaFT

しばらくして再びバタバタと慌ただしい足音がこっちへ近づいてきたかと思うと、神楽が
教室へと駆け戻ってきた。
「ちよちゃん、ちょっとごめんよ!」
と、言うが早いが榊の腕を掴んで自分の元へ引っ張り肩に首をまわして、そのままちよに背を
向けたままひそひそと話し出した。

「…榊。マッサージの件だけど…それ、私がやってやる」
「え?な、何で?」
「何でもクソも…!…何だよ?私じゃ不満なのか!?」
「い、いや……もちろん嬉しいけど…。でも…君も部活で疲れてるだろ?」
榊の問いに神楽は憮然とした顔つきでポツリと呟いた。
「…妬く」
「え?」
「いくら相手が智でも…んなあんたにべたべた触るような事されたら、き、気分がよくねぇだろ!」
「あ…あぁ。そういう…。……そうか…悪かった」
「こ、こんな事言わすなよ!!」
「ごめん」
素直な気持ちで謝罪を口にするが、じろりと睨んだままで神楽の機嫌はまだ直らない。
「榊…念のため言うけどさ。浮気なんてしたらぜってぇ許さないからな」
榊は軽く息を吐くと、神楽の瞳を真っ直ぐに見つめ直した。
「私には…神楽だけ。それはあの時から今も、そしてこれからも変わらない」
「………」
「本当だ。私は神楽を愛…」
そう言いかけた時、不意に神楽の顔が目の前に近づいて、榊の唇のすぐ近くで柔らかなモノが触れた。
そして神楽は榊の耳元に口を近づけて一言だけ囁くと、あとは目もくれずに廊下に向かって走り出した。 
 

38 名前:純粋なままでいて下さい[sage] :2006/03/18(土) 00:51:01 ID:VGv8TaFT

「榊さん?」
神楽がいなくなってもその場から動かずに硬直している榊を不審に思い、ちよは後ろから声をかけた。
ピクリと肩が震えたかと思うと、どこかぎこちない動作で榊は振り返る。
榊の顔を見てちよは少し驚いた表情で尋ねた。
「榊さん…神楽さんに何か良いことでも聞いたんですか?」
「え?ど、どうしてそう思うの?」
「…その、なんか…口元が緩んでますし……それにお顔、真っ赤ですよ?」
「あ…!」
大慌てで顔を両手でゴシゴシと擦り出す榊。いつもの落ち着きなど、今の榊には微塵もない。
「神楽さんは何を…?」
「それは…」
榊は言葉を止める。そして、すぐ近くにある神楽の机にそっと細い指先を滑らせた。
「とても大事な言葉。でも私と神楽の間でしか…伝わらないんだ」
「?」
「ちよちゃんも…もう少し大人になれば分かる、と思う」
答えになっていない。ただそう言って笑う榊の顔は幸せそうで、それでいてどこか大人びて
目に映った。

皆は何を勘違いし、榊は神楽に何を言われたのか?
あまりにも純粋すぎる心の持ち主である美浜ちよ(13歳)には皆目見当もつかなかった。

(終)

 

 

 

 

 

 

 

 

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